RESPECT

大阪大学 未来共生イノベーター博士課程プログラム(Doctoral Program for Multicultural Innovation, Osaka University)

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プログラムについて

プログラムの理念

現代社会では、グローバリゼーションの名のもとに、国境の壁を超えて、人・モノ・カネ・情報が絶え間なく、しかも迅速かつ大量に行き来しています。そのなかで重要な社会的要請として浮かび上がってきているのが、「多文化共生社会の実現」という課題です。

例えば日本の総務省は、多文化共生を「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」(『多文化共生の推進に関する研究会報告書2006年』)と捉え、入出国管理・労働・教育・福祉・社会参画・まちづくり等の分野での施策の抜本的な見直しを図ろうとしています。

この定義は、日本における多文化共生の推進の出発点としては有益な定義ですが、今日の文脈ではやや狭すぎるように思われます。グローバル化時代に未来を見据えた「多文化性」を考える際には、国籍、民族、言語、宗教といった狭義の文化的属性のみならず、性差や世代間、病・障害歴などによる社会的な背景の違いなども含め、多様なアイデンティティを有する人々の間での共生の課題についても目をそらすべきではありません。そして、文理にわたる高度な知やスキルと高潔な人格とグローバルな現場での実践経験をもち、他を牽引し、社会のさまざまな場面で共生のニーズを具体的な施策を通じて実現できるリーダー人材が必要とされています。

本学位プログラムによって私たちが養成したいと考える人材は、自らのコアとなる専攻分野で博士レベルの高度で先端的な専門的知見を高めると同時に、他者に対する深い理解を伴う敬意(respect)にもとづき、「多様で異なる背景や属性を有する人々が互いを高め合い、共通の未来に向けた斬新な共生モデルを具体的に創案・実施できる知識・技能・態度・行動力を兼ね備えた研究者・実践家」たる「未来共生イノベーター」です。他者への敬意を通じた多文化理解と社会革新を促す本事業を、「RESPECT(Revitalizing and Enriching Society through Pluralism, Equity, and Cultural Transformation)プロジェクト」と略称するゆえんです。

メッセージ

大阪の学校現場では、しばしば「違いを豊かさに」「違いを力に」といった言葉が聞かれます。国籍や民族だけでなく、障害の有無や家庭背景の違いなども含め、人々の間にある差異を貴重な資源・メリットだと捉えようという視点です。

本プログラムでは、志を同じくするメンバーが、多文化共生社会実現のために日々活動しています。皆さんも、私たちのパートナーとして、ともにプログラムを創造していきましょう。

プログラム・コーディネーター 澤村信英(人間科学研究科・教授)

プログラムの内容

「人間科学未来共生博士課程プログラム」(以下、本プログラム)は、平成24年度に文部科学省による「博士課程教育リーディングプログラム」の複合領域型に採択された「未来共生イノベーター博士課程プログラム」を基盤としています。平成31年度より、人間科学研究科にて新たなスタートを切る本プログラムは、多文化共生問題の最先端の研究・実践をリードする人材の養成を目指しています。

本プログラムを履修する大学院生(以下、履修生)は、5年一貫の大学院博士課程を通じ、個別の専攻と多文化共生の両分野で実質的な「ダブルメジャー」教育を受けることになります(ただし、博士学位はひとつ)。多文化共生分野で活躍する人材に必要な資質として、「多言語リテラシー」「フィールドリテラシー」「グローバルリテラシー」「調査リテラシー」「政策リテラシー」「コミュニケーションリテラシー」という6つの要素から成る、「多文化コンピテンシー」の獲得が求められます。

本プログラムのカリキュラムは、各リテラシーの養成を念頭に「アカデミックワーク」と「プラクティカルワーク」から構成されています。「アカデミックワーク」では、参加型学習を組み込んだ多様な科目群が、また「プラクティカルワーク」では、大学外のさまざまなフィールド・実践の現場における体験的学習が組織・展開されます。

2年修了時に実施されるQE(Qualifying Examination)は、3年次への進級審査です。また、3年修了時はリサーチ・プロポーザルの審査が行われ、これに合格すれば本プログラムの修了要件の一部となる博士論文を書く資格を獲得できます。本プログラムを修了し、専門分野の学位を授与された履修生には、学位記に本プログラムを修了したことが付記されます。